
近年ドローンの技術発展に伴い、個人で撮影した動画を自身のSNSに投稿したり、映画やCM、テレビのカットとして不動産、観光名所などの空撮、農業の薬剤散布など、あらゆるビジネスで活用を試みる企業や経営者が増加傾向にあります。
また、内閣府主導でまとめた「空の産業革命に向けたロードマップ」では2020年度に有人地帯でのドローン目視外飛行を目標に掲げており、その実現に向けて環境や法律の改正等の動きが進んでいます。
そんな中、ドローンに対する日本国内の認知度はまだまだ低く「いざドローンをつかって何かしよう!」と思った時に「資格・免許はいるの?」「どこで飛ばせるの?」など、たくさんの疑問が出てくると思います。
当記事では今回、そんな疑問に応えるべく『ドローンに関する資格・免許』『ドローンの飛行規制』に注目して詳しく解説していきます。
ドローン操縦に資格・免許は必要ない?
まず初めに、勘違いされている方が多いですが、現在(2020年10月)ではドローンを操縦するうえで『免許』なるものは存在していません。
自動車の運転免許の様に国土交通省で航空法にもとづき資格・免許の発行は行ってはいません。ですが、技能・知識を証明するための民間資格がいくつか存在しており、各団体がそれぞれ違った名称で発行している資格を「ドローン免許」と表現している人が多いため、ドローンの操縦には資格・免許が必要だと勘違いしてしまった方が多いのではないでしょうか。ドローンの民間資格とは、一般的に『ドローンスクール』の講習や実技を修了した際に発行される資格や修了証の事です。各ドローン資格団体が運営するドローンスクールに受講することで取得でき、団体ごとに資格の名称が異なります。現時点ではドローンを操縦するうえで必要な公的な『免許』が存在していないため、資格を持っていないからといって違法になるということはありません。
ドローンの飛行に資格・免許は必要ありませんが、場合によってはドローンの飛行場所と飛行方法に規制があり申請が必要なためしっかりと確認したうえで飛行させるようにしましょう。後にドローン飛行の規制について詳しく解説していきます。
ドローンで仕事をするなら資格があると有利
現在ドローンを飛行させるうえで必要な資格はありません。そうなると「ならドローンの資格・免許ってとる必要ある?」と思われるかもしれませんね。
飛行場所や飛行方法の規則を守り、趣味でドローンをつかって動画を撮影したり楽しむだけなら問題ないでしょう。ですが、ドローンを活用した仕事・ビジネスをする場合は資格が有利に働くシーンが多く、ドローン資格を所持していることがアドバンテージとなります。自身の収入にも直結してくるポイントなので資格取得を是非、検討してみましょう。
▼ドローン資格の種類や資格取得が可能なドローンスクールを別記事でまとめています!
ドローン規制の認知と法整備の経緯
日本において、2015年4月22日に発生した首相官邸への『ドローン落下事件』というドローン事故がきっかけで、ドローンというものの存在が日本で世間に広く知られることとなり、行政がドローンの飛行に対する法整備を本格的に始める契機となりました。
2015年以降、航空法をはじめとしたドローンに関するさまざまな法令が整備され、同時に産業分野ドローンを利用する機運が高まり、ドローンを利活用を振興するさまざまな行政の施策が設けられていくこととなりました。
ドローン規制に関する項目
▼ドローンを飛行させるうえで気を付けなくてはいけない法律・規制・条例は6つ。
1.航空法
2.小型無人機等飛行禁止法
3.民法
4.電波法
5.道路交通法
6.都道府県、市町村条例
どの法律・規制・条例も「飛行機との衝突」「建物への衝突」「人との衝突」など『安全の確保』が一番の目的で法環境が整備されています。
過去には実際に航空法に違反した人物が逮捕される事例も発生しており、ドローンに関する規制に違反する悪質な行ないをした場合には厳格に処罰されることが明らかになっているため、ひとつずつ分かりやすく解説していきます。
1.航空法
出典:国土交通省
上記の(A)~(C)の空域のように、航空機の航行の安全に影響を及ぼすおそれのある空域や、落下した場合に地上の人などに危害を及ぼすおそれが高い空域において、無人航空機を飛行させる場合には、あらかじめ、国土交通大臣の許可を受ける必要があります。
【飛行禁止区域】
(A)空港等の周辺の上空の空域
(B)150m以上の高さの空域
(C)人口密集地区の上空
【飛行禁止区域(A)~(C)】
(A)空港等の周辺の上空の空域
出典:国土地理院
空港等の周辺の空域は、空港やヘリポート等の周辺に設定されている進入表面、転移表面若しくは水平表面又は延長進入表面、円錐表面若しくは外側水平表面の上空の空域、(進入表面等がない)飛行場周辺の、航空機の離陸及び着陸の安全を確保するために必要なものとして国土交通大臣が告示で定める空域です。
※上記図の緑色の箇所
▼実際に飛行させたい場所が「空港等の周辺の空域」に該当するか否かは、以下を利用してご確認ください。
・ 進入表面等の設定状況(広域図・詳細図)
・国土地理院「地理院地図」
(B)150m以上の高さの空域
地表またわ水面から150m以上の高さから空域の飛行について、一律に制限が設けられています。許可申請の前に空域を管轄する管制機関と調整をおこなってください。
▼空域を管轄する管制機関の連絡先等については以下をご参照ください。
・ 進入表面等の設定状況(広域図・詳細図)
(C)人口集中地区の上空
出典:国土地理院
人口集中地区は、5年毎に実施される国勢調査の結果から一定の基準により設定される地域です。
※上記の赤い箇所が人口密集地区です。
▼実際に飛行させたい場所が「人口集中地区」に該当するか否かは、以下を利用してご確認ください。
・ 国土地理院「地理院地図」
・e-Stat 政府統計の総合窓口「地図による小地域分析(j STAT MAP)」
※【参考】j STAT MAPによる人口集中地区の確認方法
【飛行の方法①~⑩】
国土交通省の航空法では10通りの規制を定めています。規制は「すべての無人航空機が例外なく遵守事項となる飛行の方法」と「国土交通大臣の承認があれば例外的に許容される飛行の方法」の2つに分けられます。
<遵守事項となる飛行の方法>
※すべての無人航空機が例外なく遵守事項となる飛行の方法
①飲酒時の飛行禁止
②飛行前の確認
③衝突予防
④危険な飛行の禁止
<基本的な飛行の方法>
※国土交通大臣の承認があれば例外的に許容される飛行の方法
⑤日中での飛行
⑥目視内での飛行
⑦ 距離の確保
⑧催し場所での飛行禁止
⑨危険物輸送の禁止
⑩物件投下の禁止
<遵守事項となる飛行の方法>
すべての無人航空機が例外なく遵守事項となる飛行の方法出典:国土交通省 航空局
▼以下①~④の飛行方法については、国土交通大臣の承認の対象ではなく、無人航空機の全ての飛行に関して禁止・遵守が求められます。
①飲酒時の飛行禁止
②飛行前の確認
③衝突予防
④危険な飛行の禁止
<基本的な飛行の方法>
国土交通大臣の承認があれば例外的に許容される飛行の方法出典:国土交通省 航空局
▼ドローンを飛行させる場合には、以下の⑤~⑩方法に従ってドローンを飛行させましょう。
※⑤~⑩以外の方法でドローンを飛行させたい場合は国土交通大臣からの承認が必要ですので、所定の手続きを行う必要があります。
⑤日中での飛行
⑥目視内での飛行
⑦ 距離の確保
⑧催し場所での飛行禁止
⑨危険物輸送の禁止
⑩物件投下の禁止
<飛行ルールの対象となる機体>
平成27年9月に航空法の一部が改正され、平成27年12月10日からドローンやラジコン機等の無人航空機の飛行ルールが新たに導入されることとなりました。
法改正により対象となる無人航空機は、「飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船であって構造上人が乗ることができないもののうち、遠隔操作又は自動操縦により飛行させることができるもの(200g未満の重量(機体本体の重量とバッテリーの重量の合計)のものを除く)」です。いわゆるドローン(マルチコプター)、ラジコン機、農薬散布用ヘリコプター等が該当します。

国土交通省:航空局より
2.小型無人機等飛行禁止法
出典:警視庁ホームページ
◆飛行禁止区域
本法第9条第1項の規定に基づき、警視庁が所管する「小型無人機等飛行禁止法」の対象施設周辺地域は(対象施設の敷地又は区域及びその周囲おおむね300メートルの地域)の上空においては、小型無人機等の飛行を禁止しています。
・皇居
・霞が関の諸官庁
・国会
・政党本部
・原子力発電所
・米軍基地
etc…
▼【小型無人機等飛行禁止の対象施設と管轄する警察所の詳細はこちら】
警視庁ホームページ
◆違反した場合は?
<対象>
- 対象施設及びその指定敷地等の上空で小型無人機等の飛行を行った者
- 法第10条第1項による警察官の命令に違反した者
<処分>
- 1年以下の懲役又は50万以下の罰金に処せられます
◆その他の飛行場所の注意点
法律に明記された禁止事項でなくても、ドローンを利用する上で避けるべきことや注意すべきことが存在します。周囲の状況などに応じて、さらに安全への配慮が求められるので、以下にまとめていきます。
<国家的行事やイベント関連施設の付近>
G20サミットやワールドカップ、米大統領来日など国家的行事やイベントの際には関連施設の周辺が突発的に飛行禁止区域に指定される場合があるので注意が必要です。
<航空機の発着場付近>
空港等以外の場所でも、ヘリコプターなどの離着陸が行われる可能性があります。航行中の航空機に衝突する可能性のあるようなところでは、ドローンを飛行させないでください。
<高速道路や新幹線等の上空>
高速道路や新幹線等に、万が一ドローンが落下したりすると、交通に重大な影響が及び、非常に危険な事態に陥ることも想定されます。それらの上空及びその周辺ではドローンを飛行させないでください。
<鉄道車両や自動車等の上空>
鉄道車両や自動車等は、トンネル等目視の範囲外から突然高速で現れることがあります。そのため、それらの速度と方向も予期して、常に必要な距離(30m)を保てるよう飛行させてください。
<高圧線、変電所、無線施設の付近>
高圧線、変電所、電波塔及び無線施設等の施設の付近ならびに多数の人がWi-Fi などの電波を発する電子機器を同時に利用する場所では、電波障害等により操縦不能になることが懸念されるため、十分な距離を保ってドローンを飛行させてください。
国土交通省:航空局より
無人航空機の安全な飛行のためのガイドライン
3.民法
民法では「土地所有権の範囲」として、土地の所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及ぶ、と明記されています。そのため、誰かの所有地でドローンを飛行させる場合、土地の所有者や管理者の承諾を得るのが望ましいです。
なお、民法では土地の所有権に正確な高さが明記されていません。ですが、第三者の土地の上空でドローンを飛行させる場合は、事前に許可を得ることが、最低限のマナーといえるでしょう。
【私有地の例】
・駐車場
・電車の駅、路線
・神社、仏閣
・観光地
・山林
etc…
4.電波法
ドローンは本体となる「機体」を「送信機(プロポ)」からの無線電波によって操作します。無線局免許や無線従事者資格が不要ですが、他の電波装置との混線などを防ぐため、『技術基準適合証明等(技術基準適合証明及び工事設計認証)通称:技適』を取得を義務付けています。
DJIやParrotなどの大手メーカーの正規販売代理店が販売するドローンは、基本的に技適通過済みなので問題ありませんが、技適を受けていない海外製のものもあるので、ドローンを飛行させる前に、きちんと確認するようにしましょう。

◆技適マークが付いていない無線機はどうして使用できないのか?
電波は多くの人が利用しており、現在の社会生活に欠かすことのできない重要なものですが、電波は有限希少ですので効率的に使って頂くために、使用するチャンネルや送信出力、無線機の技術基準など様々なルールが設けられています。
技適マークが付いていない無線機の多くは、これらのルールに従っていません。このような無線機を使用すると、知らずに他人の通信を妨害したり、ひいては社会生活に混乱を来すことになりかねません。
技適マークの付いていない無線機の購入・使用は十分ご注意下さい。
5.道路交通法
『道路交通法』では、第七十七条で「道路において工事若しくは作業をしようとする者」に対して「道路使用許可申請書(申請料2,700円)」を管轄の警察署に提出し、事前に許可証を取得しなければならないと定めています。道路上や路肩などでドローンの離着陸を行う場合はこのケースに該当するため申請が必要です。また、道路を通行する車両に影響を及ぼすような低空を飛行する場合も同様の許可が必要です。

▼【道路使用申請の管轄の詳細はこちら】
警視庁ホームページ
6.都道府県・市町村条例
ここまで紹介したドローンの飛行に関する法律は、日本全国どこであっても適用されますが、『条例』に関しては都道府県、市町村によって各々異なります。ドローンを飛行させる場合には事前に飛行させる場所の確認が必要です。
【条例の事例】
・都立公園もドローン使用禁止 都、81カ所に通知 |日経新聞
・県立都市公園内でのドローン禁止の掲示について|千葉県庁
・公園・公共施設 よくある質問|相模原市